乳腺腫瘍とは？

 乳腺腫瘍とは、乳腺組織の一部ががん化(腫瘍化)して大小不同のしこりができる病気です。

しこりが小さいうちは良性のものが多く、ほとんどの場合は、手術で摘出することにより根治可能です。

大きくなると悪性の乳腺腫瘍も多く、手術での根治が難しいケースもある怖い病気です。

 

原因は？

乳腺腫瘍は、主に卵巣から分泌される女性ホルモンの影響により乳腺細胞が増殖する過程で、遺伝子変異などを生じて増殖が止まらない状態、つまり腫瘍化すると発生します。

若齢の時に避妊手術をすることで、乳腺腫瘍の発生率が低くなります。

6〜9ヶ月齢ごろの初回発情前に避妊手術をし、卵巣を摘出した場合、発生率は0.5%（200頭に1頭）と非常に低くなります。

逆に避妊手術をしないことで、年齢とともに乳腺腫瘍の発生率は上昇してくという報告もあります。

 

良性or悪性？

最終的な確定診断は、手術で摘出した腫瘍組織の顕微鏡検査（病理組織検査）で決定します。ただし、腫瘍のサイズ、成長速度、皮膚の自潰の有無、細胞診での細胞形態などで術前に良し悪しの予測を立てます。

腫瘍のサイズにより根治できるかどうかある程度は判断が可能です。小さいほど悪性腫瘍の可能性が低く、1cm以下であればほぼ手術で根治すると言われいてます。しかし、確定診断を出さない限りは必ずしも安心はできません。

 

どこに転移する？

そもそも乳腺腫瘍は他組織・臓器へ転移をするのでしょうか。

悪性の乳腺腫瘍の場合は、治療が遅れた場合、腫瘍の発生部付近のリンパ節や肺などに転移することがあります。

初めに転移するリンパ節は腫瘍ができた乳腺の場所によって異なり、第1～第2乳腺は腋窩リンパ節(脇あたりにあるリンパ節)に、第4～第5乳腺はそ径リンパ節(股あたりにあるリンパ節)に転移します。

真ん中の第3乳腺の場合には、第1～第2乳腺あるいは第4～第5乳腺、もしくは両方向へ転移する可能性があります。その後、肺や腹腔内のリンパ節・腹腔内の臓器にも転移します。

このように治療が遅れた場合には、リンパ節の腫大や肺が腫瘍で侵されることによって、命を落とすこともある恐ろしい病気です。

 

治療法は？ 

外科手術による腫瘍の切除が第一選択の治療・処置となります。転移していない段階の乳腺腫瘍では、手術によって根治することが多いです。

すでに転移してしまっている腫瘍では、手術によって腫瘍や転移したリンパ節を切除しても、患部の切除だけで根治することは残念ながらありません。

しかし、手術をしない場合、将来的に大きくなった乳腺腫瘍が痛みや感染の原因になることが多いため、転移が見つかった場合であっても、将来的な問題の予防を目的に腫瘍の切除が勧められます。

 

根治は可能？

1cm未満の腫瘍では、100%長期生存するのに対し、1～3cmでは根治率は8割弱、3cm以上では根治率は6割弱という報告があり、サイズが大きいほど予後が悪くなることがわかります。

すでにリンパ節等へ転移している場合には、根治は困難です。

また、腫瘍を切除した後で、数か月から数年後に、残った乳腺がまた腫瘍化することがあります。

 

乳腺の摘出術？

下記に示すような切除の方法があり、腫瘍の回りを広い範囲で切除するメリットは、腫瘍細胞の取り残しがないことです。

また、腫瘍化していない乳腺まで同時につけて切除する方法は、将来的な乳腺腫瘍の予防のために残存する乳腺の量を減らしておくことを目的に実施します。

・結節切除術：主に良性疑いの小さな腫瘍を摘出に用いる方法です。

将来的に新たな乳腺腫瘍が発生する可能性、悪性だった場合に取り残しが起きて、再発の原因になる危険性もあります。

・領域乳腺切除術：第１〜３乳腺部、第３〜５乳腺部と鼠径リンパ節を一つの領域として切除する方法です。

傷は長くなりますが、取り残しが少ないこと、残存する乳腺量を減らせること、鼡径リンパ節が同時に摘出されるため、リンパ節転移の有無が病理組織検査で確定できる方法です。

・片側乳腺切除術：片側の乳腺部と鼠径リンパ節を切除する方法です。複数の乳腺に病変がある場合に行う方法です。将来的に新たな乳腺腫瘍が発生する確率も減らすことができます。傷が大きくなり、皮膚がつっぱることがありますが術後1週間程度で、皮膚が延び、皮膚のつっぱりは徐々になくなります。

 

乳腺腫瘍は未避妊だと多く発生する腫瘍です。避妊をすることで予防も可能です。また、しこりなどいつもと違う様子がありましたら、病院へご相談ください。

 

乳腺腫瘍の症例紹介はこちら：https://naha-ah.com/case-nyuusennsyuyou/